著名人が語る“岡城の魅力” Essay

市長―
この度は竹田市にお越しいただき、ありがとうございます。千田先生とは2016年に竹田市で開催された「全国山城サミット」以来の再会になりますね。
千田教授―
そうですね。「全国山城サミット」では本当に全国からたくさんの方に集まっていただいて、竹田市の魅力、そして岡城の魅力を全国の方に実感していただけたと思います。
市長―
あれから岡城も様々なご意見をいただきながら整備を進めまして、2016年の熊本地震で部分的に被害を受けた箇所も修復し、石垣も毎年地域の方々と掃除をする日を決めて整備してまいりました。竹田にいらした当時から比べると随分と石垣が見えやすくなっていませんでした?
千田教授―
4年ぶりに拝見しましたが、別の城に来たのかと思うほど見違えました。石垣の全貌が見えるようになって、改めて岡城の素晴らしさを実感できました。やはりどんなにすごい城でも、石垣や堀などが木々に覆われては本当の歴史的価値を実感するのは難しくなってしまいます。岡城では竹田市が地域のみなさんと連携して、史跡の本質的価値である石垣の「見える化」を進めたことで、山の地形を活かしつつ高石垣を連ねた岡城本来の姿がわかるようになりました。全国のお城ファンが何度も訪れたい特別な城になったと思います。
市長―
ありがとうございます。千田先生もご出演されていました、2019年の5月にNHKで放送された『日本「最強の城」スペシャル 第3弾』。いくつか候補が上がる中で最後に岡城が選ばれた時はとても喜びました。反響は大きく、昨年は前年に比べて1万5000人も登城者が増えたんですよ。番組内でも石垣のことに触れていただいていましたが、やはり岡城最大の魅力は石垣の美しさと言えるのでしょうか。
千田教授―
そうですね。岡城の石垣はいわゆる穴太衆(あのうしゅう)と呼ばれた石工集団がつくり上げた典型的な城石垣で、荒割り石の石垣から精緻な布積みの石垣まで見られます。石垣はそれぞれの場所で石の加工度や積み方が異なって、城全体が「石垣の博物館」といえます。特に本丸へつづく重要な出入り口だった太鼓櫓門の石垣は、切石の巨石をマチュピチュのように、カミソリの刃が入らないほど緻密に積み上げていました。技術の粋を尽くした石垣で、将軍の居城だった江戸城本丸前出入り口の石垣に匹敵しました。日本各地に残っている城石垣の中でも、特筆すべき価値があります。

市長―
岡城に似たお城でいえば、パートナーシップ宣言を結んでいる兵庫県朝来市の竹田城や岐阜県恵那市にあります山城の岩村城がありますが、どちらもお城と城下町の距離が近いですよね。しかし岡城の場合は、戦略として城下町と岡城をどう繋ぐかというのが常々テーマだと感じていました。そこで今竹田市では城下町の再生事業を行っています。無電柱化が完了し、今春には岡城のガイダンスセンターとしての機能も持つ隈研吾さん設計の歴史文化館「由学館」と「城下町交流プラザ」も完成するのですが、今の城下町の状況を総合的に見て、これから先、岡城にスポットを当てたまちづくりについてアドバイスをいただけますか。
千田教授―
城下の町と城をつなぐ関係性づくりなど、山城である岡城の整備に留まらず、城下との歴史的な関係を、誰もが体感できるようになるのは素晴らしいことだと思います。間もなく城下の「まちなか」に、岡城のガイダンスセンターでもある歴史文化館が、隈研吾先生設計で出来上がるのは楽しみです。城下町で岡城の特色を学んで、ご飯を食べて、城を訪ねる、「まちと城の連携拠点」ができるのは、「歴史を活かしたまちづくり」として全国的にも先進的な取り組みです。こうしたハードの整備を着実に進められましたので、次はソフトの取り組みが大切になってくると思います。いくら形を作ってもそれだけで町が輝く訳ではありません。城下町としての竹田が育んだ文化と芸術を感じられる取り組みを、地域のみなさんが主人公になって推進していくことで、竹田が地域のみなさんにとっても、訪問者にとっても、さらに魅力的なまちになるのではないでしょうか。
市長―
ソフト面で言うと竹田市は、移住政策に力を入れています。歴史的に見ると、城下町は外からいろんな技術や知識を持っている人材が訪れたことで、様々な文化や技術の花が開いてきました。その歴史を踏まえて、作家の招聘を行ったんです。さらに地域起こし協力隊の制度を使いまして、技と知識を持つ人材を呼びました。それぞれにユニークな活動を城下町周辺でしていただいています。
千田教授―
なるほど。まさに城下町の歴史を活かしたまちづくりですね。外からの人をあたたかく受け入れて、みんなが活躍した城下町という固有の歴史がある竹田だから、今も地域の方と移住された方が一緒になって、新しい文化や芸術を生み出しているのだとわかりました。
市長―
政策にはやはり連なっていくストーリーが大事ですよね。城や町、歴史、人といった複合的な掛け算から生まれたアイデアが、移住定住してくれた若い人たちからもきっと立ち上がってくるでしょうし、地元の人たちがそういった可能性を引き出していけるような演出家になることで、竹田本来のポテンシャルを引き出すことができると思います。先生が言われるようにソフトとハードを織り交ぜながら、魅力的なまちづくりを推進していきたいですね。本日はありがとうございました。
